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AIコーディングをはじめよう

第9章・実践の基本

コンテキスト:AI が一度に見ている範囲

第2章で、モデルは会話を覚えておらず、アプリが毎回それまでのやりとりをまとめて送っていること、まとめて読める量には上限(コンテキストウィンドウ)があることを見ました。この章はその続きです。

AI エージェントに作業を任せると、頼んだ文だけでなく、読んだファイルの中身やコマンドの出力も、どんどん積み上がっていきます。積み上がった中身の全部を「コンテキスト」と呼びます。上限に近づくと何が起きるのか、どう整えればよいのかを、Claude Code を例に順に見ていきます。

読み終えるころには、「コンテキストがいっぱいになってきた」「関係ない話を混ぜるとコンテキストが汚れる」「一回 /compact して」「新しい作業は /clear してから」といった会話が分かるようになります。

この章で見ること
コンテキストの箱に、指示ファイル・頼み・読んだファイル・ログ・返事が積み上がるようすと、上限に近づいたときの自動の圧縮を図で見ます。そのあと Claude Code の画面で /context・/compact・/clear を打ったところを見て、使い分けとこつ、ほかの社のツールの対応を見ます。
読み終わると
「コンテキストがいっぱい」「コンテキストを汚さない」の意味が分かり、/clear と /compact を使い分けられる
前の章までに知っていること
第2章の内容(モデルは会話を覚えておらず毎回まとめて送られること、トークン、コンテキストウィンドウ)と、第4章の内容(AI エージェントが道具を使ってファイルを読み、コマンドを動かすこと)。第8章のスラッシュコマンドを読んでいると、コマンドの場面が分かりやすくなります。
読む時間の目安
15分ほど

この章で出てくる言葉

分かる言葉は読み飛ばして構いません。途中で分からない言葉が出たら、ここに戻ってくるか、用語集で探してください。

コンテキスト
AI が返事を作るときに読んでいる中身の全部。システムプロンプト・指示ファイル・それまでの会話・読んだファイル・道具の結果などが入っています。入れられる量の上限が、コンテキストウィンドウです。
コンテキストの使用量(しようりょう)
コンテキストウィンドウのうち、いま埋まっている量。Claude Code では /context で、何がどれだけ場所を取っているかを項目ごとに見られます。
コンテキストの劣化(context rot)(れっか)
コンテキストに入っている量が増えるほど、AI が中身を正しく拾いにくくなること。前のほうの指示を忘れたり、間違いが増えたりします。たくさん入れるほどよいわけではなく、何を入れるかが大事です。
圧縮(compact)(あっしゅく)
それまでの会話を短いまとめ(要約)に置き換えて、コンテキストの場所を空けること。Claude Code では /compact で自分で始められ、まとめで残してほしいことを書き添えられます。細かいところは抜けることがあります。
自動の圧縮(じどうのあっしゅく)
コンテキストが上限に近づいたとき、アプリが自動で古いやりとりをまとめて場所を空けること。Claude Code では最初から有効で、まず古い道具の結果を消し、それでも足りなければ会話を要約します。

下にスクロールすると、図が1つずつ動いて説明が進みます。見逃したら、スクロールを戻せば同じところが巻き戻ります。図は、しくみを説明するために描いた模式図です。実際のアプリの画面ではありません。

  1. 01 / 18

    AI が返事を作るときに読んでいる中身の全部を「コンテキスト」と呼びます。入れ物の大きさの上限が、第2章で見たコンテキストウィンドウです。

    モデルは会話を覚えていないので、アプリが毎回この箱の中身をまとめて送っています(第2章)。この章では、箱に何が積まれ、いっぱいになると何が起き、どう整えるかを見ます。

    会話では:「それ、コンテキストに入ってる?」は、AI がいまそれを読める状態になっているか、という意味です。

    しくみの図コンテキストに積み上がるもの
  2. 02 / 18

    Claude Code では、あなたが何か打つ前から、いくつかのものが箱に入っています。

    アプリの指示(システムプロンプト)、道具とスキル(作業の手順書。第13章)の説明、決まりごとを書いた指示ファイルの CLAUDE.md(第12章)などです。どれも、やりとりのたびに一緒に読まれます。

    会話では:「CLAUDE.md を長くしすぎないで」と言われるのは、毎回コンテキストに入って場所を取るからです。

    しくみの図コンテキストに積み上がるもの
  3. 03 / 18

    頼みを送ると、それが積まれます。AI がファイルを読むと、読んだ中身も積まれます。

    画面には「Read 1 file」のように1行しか出なくても、箱にはファイルの中身が入っています。画面に出ないものも、コンテキストには入ります。

    会話では:「そのファイルはもう読ませてある」は、中身がコンテキストに入っている、という意味です。

    しくみの図コンテキストに積み上がるもの
  4. 04 / 18

    長いログ(動いた記録)やコマンドの出力を読むと、箱は一気に埋まります。

    テストの結果やエラーの記録は、何百行にもなることがあります。Anthropic も、不具合を1つ調べるだけで、たくさんのトークンを使うことがあると書いています。

    会話では:「ログを全部読ませるとコンテキストを食う」——長い出力は場所を大きく取るので、必要なところだけ読ませるよう頼めます。

    しくみの図コンテキストに積み上がるもの
  5. 05 / 18

    AI の返事と、そのあとのやりとりも積まれます。前のものは消えずに残り、箱はどんどん埋まります。

    AI はやりとりのたびに、積み上がった全部を読み直して返事を作ります。そのため、箱が埋まるほど、1回ごとに使うトークン(料金や利用枠のものさし)も増えます。

    会話では:「さっき言ったこと、覚えてる?」が通じるのは、前のやりとりが箱に残っているからです。

    しくみの図コンテキストに積み上がるもの
  6. 06 / 18

    箱が埋まるほど、AI の調子は落ちやすくなります。前のほうの指示を忘れたり、間違いが増えたりします。

    たくさん入れるほどよい、というわけではありません。量が増えると中身を正しく拾いにくくなることを、コンテキストの劣化(context rot)と呼びます。

    会話では:「関係ない話を混ぜるとコンテキストが汚れる」——関係ない話や、うまくいかなかったやり方も箱に残り、AI はそれにも引っぱられます。

    しくみの図中身が少ないときと、いっぱいに近いとき
  7. 07 / 18

    箱の上限に近づいてきました。「コンテキストがいっぱいになってきた」は、この状態のことです。

    箱のうち、いま埋まっている量を「コンテキストの使用量」と呼びます。上限の大きさはモデルごとに違い、各社のモデルの説明のページに載っています。

    会話では:「コンテキストがいっぱいになってきたから、いったん整理しよう」のように使います。整理のしかたは、このあと見ます。

    しくみの図コンテキストに積み上がるもの
  8. 08 / 18

    上限に近づくと、Claude Code は古いやりとりを自動でまとめて、場所を空けます。これを「自動の圧縮」と呼びます。

    まず古い道具の結果(読んだファイルやログ)を消し、それでも足りなければ、会話を短いまとめ(要約)に置き換えます。最初から有効なので、作業は止まらずに続きます。

    会話では:「自動でコンパクトが走った」「途中で compact された」は、この自動の圧縮が起きた、という意味です。

    しくみの図コンテキストに積み上がるもの
  9. 09 / 18

    まとめたあと、指示ファイルなどはファイルから読み直されます。一方、会話で伝えただけの細かい指示は、抜けることがあります。

    システムプロンプト・指示ファイル・自動メモリ(AI が自分で付けるメモ)と、最近読んだファイルのいくつかは元のまま入ります。会話のまとめは、頼んだことや大事なコードを残すように作られますが、細部までは戻りません。

    会話では:「それは CLAUDE.md に書いておいて。会話で言っただけだと、圧縮のあとで抜けるかもしれないから」——ずっと守ってほしいことは指示ファイル(第12章)に書きます。

    しくみの図まとめたあとに、残るもの・置き換わるもの
  10. 10 / 18

    ここからは、自分で整えるコマンドを Claude Code の画面で見ます。app.log というログを読ませて、原因を聞いたところです。

    画面は Claude Code 2.1.301(2026年10月時点)の表示を写したものです。AI の返事の文は、この教材が用意した見本です。

    会話では:「/」で始まるコマンドは、AI への頼みではなく、Claude Code そのものへの操作です(第8章)。

    ~/practice
  11. 11 / 18

    /context と打つと、いまのコンテキストの使用量が項目ごとに出ます。何が場所を取っているかが分かります。

    System prompt はアプリの指示、System tools は道具の説明、Messages は会話、Free space は空き、Autocompact buffer は自動の圧縮のための取り置きです。実物には、項目ごとのトークンの数も出ます。

    会話では:「/context で、何がコンテキストを食っているか見て」と言われたら、このコマンドのことです。

    ~/practice
  12. 12 / 18

    /compact は、ここまでの会話を自分でまとめさせるコマンドです。後ろに、まとめで残してほしいことを書き添えられます。

    「Compacted」は、まとめ終わった印です。そのあと、最近読んだファイルを読み直しています(Read の行)。まとめの中身は ctrl+o で見られます。

    会話では:「一回 /compact して」は、会話をまとめて場所を空けて、という意味です。長い作業に入る前にもよく使います。

    ~/practice
  13. 13 / 18

    /clear は、会話を空にして新しく始めるコマンドです。画面も、起動した直後のように戻ります。

    前の会話は消えずに保存されていて、/resume で戻れます。新しい会話でも、指示ファイルは始めにまた読み込まれます。

    会話では:「新しい作業は /clear してから」——前の作業の話が残っていると、次の作業の邪魔になるからです。

    ~/practice
  14. 14 / 18

    まとめて続けるのが /compact、空にして始め直すのが /clear です。同じ作業を続けるか、別の作業に移るかで選びます。

    /compact は、それまでの流れがまとめとして残ります。/clear は、システムプロンプトや指示ファイルのような、始めに入るものだけになります。

    会話では:「この作業はもう終わったから、/clear して次へ」「まだ続きがあるから /compact で」のように使い分けます。

    しくみの図/compact と /clear のあと
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    ほかにも、コンテキストを汚さない工夫があります。Claude Code の文書のおすすめから、よく出てくるものを並べます。

    同じところを何度直してもうまくいかないときは、失敗したやり方で箱が埋まっています。/clear して、分かったことを入れて頼み直すほうが、たいていうまくいきます。

    会話では:「ちょっと横の質問だから /btw で」——/btw の質問と答えは会話に残らないので、箱を埋めません。

    しくみの図コンテキストを汚さない工夫
  16. 16 / 18

    大きな調べものは、サブエージェント(別の箱で動く AI)に任せる方法もあります。読んだファイルは、向こうの箱に積まれます。

    サブエージェントは、元の会話とは別のコンテキストウィンドウで動きます。くわしくは第16章で見ます。

    会話では:「サブエージェントに調べさせて」は、調べものを別の箱でやらせて、元の会話を汚さないための頼み方です。

    しくみの図サブエージェントは別の箱
  17. 17 / 18

    元の会話に戻ってくるのは、調べた結論のまとめだけです。元の箱は、ほとんど埋まりません。

    ただし、サブエージェントも自分の分のやりとりをするので、使うトークンがなくなるわけではありません。

    会話では:「調べものはサブエージェントに。本筋はこっちで」のように、元の会話を本筋の作業のために空けておきます。

    しくみの図サブエージェントは別の箱
  18. 18 / 18

    ほかの社のコーディングエージェントにも、同じ考え方のコマンドがあります。使用量を見る・まとめる・空にして始め直す、の3つです。

    3つとも、上限に近づくと自動でまとめるしくみも持っています。以前からある Gemini CLI もありますが、Google は最新の Gemini モデルでのコーディングには Antigravity CLI を勧めています(2026年10月時点)。

    会話では:「Codex なら /status で残りを見る」のように、ツールが変わるとコマンドの名前が少し違うだけで、考え方は同じです。

    しくみの図3社のコマンド(2026年10月時点)

この章のまとめ

  1. 1

    コンテキストには、見えないものも含めて全部が積み上がります。システムプロンプト・道具の説明・指示ファイルが始めから入り、頼み・読んだファイル・ログ・返事が足されていきます。量が増えるほど、トークンを多く使い、AI の調子も落ちやすくなります。

  2. 2

    上限に近づくと、自動の圧縮で古いやりとりがまとめられます。指示ファイルは読み直されますが、会話で伝えただけの細かい指示は抜けることがあります。ずっと守ってほしいことは指示ファイルに書いておきます。

  3. 3

    自分でも整えられます。/context で使用量を見て、同じ作業を続けるなら /compact でまとめ、別の作業に移るなら /clear で始め直します。大きな調べものはサブエージェントに任せると、元の会話が汚れません。

この章の内容を確かめた情報源

確認日: 2026年10月25日

次の章第10章 許可のしくみとプランモードAI がファイルを書いたりコマンドを動かしたりする前に、何をどう確かめるか。先に計画を立てさせるやり方。

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